過剰グルーミング

ケア用お洋服の相談をお受けするようになってから
一番多く寄せられるご相談が『過剰グルーミング』についてです


◆過剰グルーミングとは?

皮膚にトラブルがあり、痒みや違和感があるため気にして舐め続けてしまう
また、皮膚に特に異常がないにもかかわらず、執拗に体を舐め続けることです
被毛が薄くなったり、無くなってしまい皮膚がむき出しになってしまっている状態で
さらに症状が進むと、皮膚を噛んだりして傷を付けてしまったりもします

患部の症状は様々で、1円玉くらいの小さなハゲであったり、下腹部すべてが禿げたり
後ろ足の太ももまですっかり禿げていたり、更に背中まで広がっていることもあります
また、皮膚・被毛の状態も様々でまだら毛が毟られている状態であったり
すべて禿げて無毛状態で皮膚が完全に見えているもの、更に噛んで傷を付け
血が滲んでいたり、全体的に皮膚も剥がれおちてしまっているケースなど。

猫は様々な理由により、一日に何度もグルーミングをします
体を清潔に保つ為に、グルーミングをすることは多くの方がご存知かと思います
体に唾液をつけ熱を発散させ、体温を下げたり、日光浴することで
毛に合成されるビタミンDを、グルーミングすることで摂取したりもします
また、心を落ち着かせる為にも、グルーミングをします
ストレスを抱えた猫が、その気持ちを落ち着かせる為に執拗にグルーミングを続け
皮膚にトラブルがないにもかかわらず禿げてしまうというケースもあります

過剰グルーミングの原因は、ストレスから来るものが非常に多く感じております
その為、できるだけ猫ちゃんのストレスを除いてあげることが治療への近道かと思います


 


◆洋服を着る場合の注意とお願い

体を舐め続けることの、妨げになるお洋服のご相談をお受けしておりますが
洋服を着ての治療は、洋服が苦手な子の場合、ストレスを増大させることもあります
一時的に、服で患部を舐める事を止められますが、原因を取り除かない限り完治しません

歯を立てて体を傷つけてしまう場合などは、猫の鋭い歯は生地を貫通してしまいますので
猫ちゃんの様子を見ながら、エリザベスカラーとの併用をお勧めしております

◆治療方法を探す

まず、過剰グルーミングをしてしまう原因を探さなければなりません
とにかく原因がわからないけれど、禿げてしまって困っている、というご相談を良く頂きます

様々な原因があり、真菌などによる脱毛など、原因を特定できる場合はいいのですが
ホルモンバランスの崩れから来る脱毛、何らかのアレルギーから来る脱毛などは
はっきりとした原因を特定するのが難しい為、治療も長期化します

アレルギーの疑いがある場合は、ステロイドなどの投薬で様子を見るようですが
アレルゲンが特定されないと、なかなか完治は難しいようです
ダニやハウスダストが原因の場合や、フードに含まれている食材が原因になる場合など
これらを特定するには、アレルギー血清検査などを病院で行ってもらうことになります
検査機関を持つ、専門の獣医師にご相談くださいね

これでも、原因が特定できない場合はストレスから来るものが多いと思われます
今までに、ご相談を受けたネコちゃんの多くは、環境の変化などからくる
ストレスが引き起こした、過剰グルーミングに悩まされていました

◆ストレス性過剰グルーミングの場合

転居や部屋の模様替えにより、家具の配置が変わったなど環境に対応できない
赤ちゃんが生まれるなど、家族が増える、または減ったことに対応できない
家の外で工事がはじまるなど、騒音から来るストレスなど様々です
原因が特定できる場合は、できるだけストレスになりうるものを排除してください
寂しいという思いがストレスになっているのであれば、ネコちゃんと向き合う時間を作り
体をゆっくり撫でたり、穏やかに過ごせる時間を多く作ってあげてくださいね

以前、環境の変化により過剰グルーミングを行うようになってしまった
ネコちゃんのご相談を受けたのですが、遊んであげる時間を増やしたところ
患部を舐める時間が減り、1ヶ月ほどした頃からうっすら毛が生え始めたことがありました

また、ネコちゃんの健康を考え、スーパーなどで手に入る安価なフードから
栄養バランスの良く海外で評価されているプレミアムフードに切り替えた後
症状が出てしまった為、フードを元に戻し、症状が軽減したこともありました
変えたフードにアレルゲンが含まれていたことも考えられますが
急に食事が変わること、好きだった食べ物が出てこなくなることも
ネコちゃんにストレスとなる場合もありますので、フードの切り替えや
トイレのネコ砂を変える場合なども、よくネコちゃんの様子を見ながら調整してくださいね

ストレスを溜めてしまうネコちゃんは、飼い主の気持ちにもとても敏感です
絶対に舐めないで、これ以上患部を広げさせたくないなど焦りは禁物です
飼い主の過剰な焦りがネコちゃんに伝わり、余計悪化させてしまったケースもありました
ネコちゃんと向き合い、投薬や治療の際も余裕を持って接してあげてくださいね

ネコはストレスを感じやすい動物とも言われ、思いもかけないことが原因だったりします
時間はかかるかもしれませんが、可愛いネコちゃんの為、原因を探して治療してあげてくださいね

*参考までに、ストレスの軽減にフラワーレメディーの効果があったと言うお話もありました

◆大和のケース



実は、私自身も黒猫の大和が寂しいという思いからストレスをため
結果、過剰グルーミングで禿げてしまったという経験もあります。
転居により環境が変わったことや、忙しさから、ゆっく遊んであげることが出来なかったため
大和はストレスを抱えてしまい、はじめは1円玉くらいの小さなハゲが1つ出来ました
そのハゲは、あっという間に大きくなり、翌日には500円玉大のハゲが2つに増え
禿げた部分には、噛んだ跡も見られ、うっすらと血がにじんでいました

病院で診察してもらったところ、菌も見つからず、これといった異常もありませんでした
下半身に脱毛が見られる場合、ホルモンバランスの崩れなども考えられるそうなのですが
とても気が小さな大和の性格や禿げるまでの数日間の行動や・環境が変わったことなどもあり
グルーミングで心を落ち着かせようとして、過剰にグルーミングを繰り返し禿げてしまった
可能性があることから、投薬なし、ストレスが増すと思われるエリザベスカラーの着用なしで
禿げてしまった部分をあまり舐めさせないようにして、様子を見ることにしました

1日中大和と向き合っていると、どんなときに体を舐め続けるのか分かるようになりました
名前を呼んだり話しかけたりすると心は落ち着くようで、喉を鳴らして眠りにつきましたが
トイレを使った後にすぐ片付けてもらえない時、忙しくて遊んでもらえない時は
しゃがみこんでお腹を覗き込むような姿勢で、歯を立ててお腹をグルーミングするのです
洋服を着ることに慣れていたこともあり、ハゲ部分をこれ以上広げないように
お洋服を着て、獣医さんと相談しながら治療を続けました
500円玉大の2つのハゲが目立たなくなるまでには3ヶ月、完治までは半年かかりました


その後も、何かのきっかけで寂しい思いが募るとお腹を執拗に舐めている姿を見かけますが
気がついた時に、その寂しいという気持ちを取り除いてあげたり、毛が薄くなり始めているときは
早めにTシャツなどで患部を保護して、広がらないようにしています